みなさんは、産婦人科医と聞いて、まずなにを想像しますか?
近年、「コウノドリ」や「透明なゆりかご」など、妊娠、出産や産婦人科をテーマにしたマンガがテレビドラマ化され、大きな話題を呼んでいますよね。
産婦人科医は出産の奇跡に立ち会える素晴らしい仕事である反面、業務では命に関わる内容が多くあるため、とても神経を使うハードな仕事とも言えます。
女性ならば一度はお世話になるであろう産婦人科医という存在は、身近な存在ではありますが、その仕事や現状について詳しく知っている人は少ないと思います。
ここでは、そんな産婦人科医について詳しく紹介していきます。
これから産婦人科医を目指すという方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
産婦人科は主に「産科」と「婦人科」で構成されていることをご存知ですか?
「産婦人科」でひとつの区分と認識していた方も多いのではないでしょうか。
では、「産科」と「婦人科」にはどのような違いがあるのでしょうか?
まずはその違いから見ていきましょう。
産科というのは「産」の字がついているのでイメージがつきやすいと思いますが、主に妊娠から出産までを扱っている診療科です。
妊娠の確定から妊婦健診・出産の際の分娩介助・産後の管理・新生児の管理などを行っていて、妊婦さんにとって必要不可欠な存在です。
では婦人科はどうでしょうか。
あまりイメージがわきにくいかもしれませんが、婦人科では主に子宮や卵巣などの女性特有のトラブルや病気を扱っています。
感染症や更年期障害・生理不順やさらには不妊治療まで、女性のあらゆる悩みを診てもらうことができます。
このように、産婦人科は「産科」と「婦人科」にわかれているわけですが、両方診ることができるのが「産婦人科医」というわけです。
近年、産婦人科の専門性をさらに高めていこうという動きがあり、さまざまな専門分野が活躍しています。
専門分野というのは、例えば不妊治療などを得意とする「生殖医療専門医」や子宮がんなどの腫瘍を専門にする「婦人科腫瘍専門医」、ハイリスクの妊婦にも対応できる「周産期専門医」などです。
日本の周産期医療は世界的にもトップクラスの安全性を誇っていますが、こういった専門性を高めていくことにより、さらなるレベルアップをはかり、より安全により多くの妊婦さんや赤ちゃんを助けられるように努力しているのです。
現在、産婦人科医の医師不足が深刻化しています。
原因として考えられるのは、長い勤務時間と、訴訟リスクです。
特に産婦人科の訴訟の数は、ほかの診療科目も合わせた全体のなかで2番目に多いこともあり、訴訟リスクの高さがうかがえます。
では、なぜ産婦人科医が訴訟に巻き込まれやすいのでしょうか?
それはやはり、「出産は病気ではないという意識や周囲の祝福・期待からの落差」によるものが大きいといわれています。
妊娠・出産は病気ではないため、出産のリスクを認識していない方もなかにはいます。 「赤ちゃんは無事に生まれて当たり前」「妊婦も元気に産むのが当たり前」と考えている人が、周産期死亡や妊婦死亡などに直面したとき、受けるショックは当然大きいものになります。
また、妊娠や出産は「めでたい」こととして周囲から祝福され、期待されます。
ですがその分、結果がよくなかったときは、妊産婦やその周囲の家族の落胆も大きくなってしまいます。
このようなことから、産婦人科で何かあった際、妊産婦や家族が不条理を感じる度合いも高くなり、訴訟に発展しやすくなっていると考えられます。
では、産婦人科医になるにはどうすればよいのでしょうか。
産婦人科医になるには、一般的な医師と同じように大学の医学部か医科大学で6年間勉強したあと、医師国家試験に合格しなければなりません。
医師免許を取ったあとは、民間病院や大学病院などで2年間、救急医療・循環器系、内科、脳外科、眼科などのさまざまな診療科を経験して、広く知識と経験を積むための卒後研修を受けます。
そのため、正式に産婦人科医になるまでには合わせて8年かかることになります。
産婦人科医になった後、「日本産婦人科学会」の「専門医」の資格を持つことができれば、産婦人科専門医として開業することが可能になります。
産婦人科にいくと、「産婦人科専門医」の認定証があるのを目にしませんか?
「専門医」の資格を取るには、臨床試験や症例報告、学会に論文を発表していることなど、様々な条件をクリアした上で、さらに面接と筆記による試験を受けなければなりません。
そういった厳しい条件を満たして認定された産婦人科医だからこそ、安心して診てもらえることができるというわけです。
さて、産婦人科を目指す上で気になるのは、やはり「お給料」事情ですよね。
医師は給料がいいという話はよく耳にしますが、実際はどうなのでしょうか?
ここからは産婦人科医の年収事情を見ていきましょう。
産婦人科医の平均年収は、約15,000,000円とされています。
やっぱり医師は給料がいいんだな!と思うかも知れませんが、これはあくまでも平均の話です。
給料はどうしても年代(キャリア)や地域、勤務する医療施設によってかなりの差が生まれるのです。 ひとつずつ見ていきましょう。
(参考:https://www.recruit-dc.co.jp/contents_nenshuu/sanfujinka/リクルートドクターズキャリア)
年代別の年収では、やはり若手ほど年収が少なく、ベテランになるほど年収は高くなっているのがわかります。
特に、40代以降の年代になると、20,000,000円超えの年収が増えているので、キャリアを積むことによって、相応の年収を得ることができると考えられます。
(参考:https://www.recruit-dc.co.jp/contents_nenshuu/sanfujinka/リクルートドクターズキャリア)
地域別の年収では、関東と中部の20,000,000円以上が目立ちます。
一方、北海道や中国・四国、九州・沖縄など地方になると、全体的に低めの年収になってしまうようです。
高収入を目指すために有利な地域は、関東と中部ということになります。
参考(:https://www.recruit-dc.co.jp/contents_nenshuu/sanfujinka/リクルートドクターズエリア)
医療施設別の年収では、民間病院が最も高収入を得る確率が高いということがわかります。
また、大学・国公立病院も20,000,000円以上の割合が高く、収入アップを狙う場合に有利になります。
その反面、クリニックでは10,000,000円~20,000,000円未満の割合が多く、10,000,000円以下も17%あるため、大学・国公立病院や民間病院に比べると、年収面で差が出てしまうようです。
では、産婦人科医を目指している若手医師や、現在産婦人科医として働いているベテランの医師は、どうして産婦人科医を選んだのでしょうか?
いまでは年間300人~400人程度の若手医師が新たに産婦人科を専攻しています。
ですが、さまざまなリスクがあるのに産婦人科医を目指すには必ずワケがあるはずです。
産婦人科医になる魅力というのはどんなところにあるのでしょうか。
ひとつは、なんといっても生命の誕生に立ち会えることの喜び、わが子の誕生を待ち望んでいた家族の感動的な場面を目の当たりできることへの幸福感があるといいます。
子供を出産した母親に「おめでとうございます」と言えるのは医師の中で唯一、「産婦人科医」だけなのです。
その特別感はやはり大きいものなのでしょう。
また、産婦人科の研修期間で実際の出産を目の当たりにし、関心を持つケースも少なくないといいます。
やはり一度その幸福感を味わってしまうと、産婦人科の素晴らしさに魅了されてしまうということでしょうか。
産婦人科医はハードな勤務や、訴訟リスクなどもある反面、仕事に魅力があるからこそ続けられるのだと思います。
若い情熱のある産婦人科医のためにも、そういったリスクなどの環境改善が、いまとても大事だということがわかります。
ここまで産婦人科医について解説してきましたが、「産婦人科医に向いている人」というのはどのような人なのでしょうか。
産婦人科医になるために必要なことは「体力がある」こと、「何事にも動じない精神力がある」こと、そして「一時の出来事に一喜一憂していないで長い目でモノが見通せる力がある」ことだといいます。
これは産婦人科以外の医師にも共通していることだと思いますが、やはりそういった「力」がある人でないと、ハードな産婦人科医というものを続けていくことができないということでしょう。
産婦人科はとても神経を使う仕事ですが、無事に赤ちゃんが生まれたときなどは、そういった疲れも吹き飛んでしまうそうです。
ですので、産婦人科になるために必要な「力」を持ち、細かいことに気を配ることが出来るような人が産婦人科医に向いているといえます。
最初からその「力」をすべて身につけるのは大変なことですが、「人のためになりたい」という純粋な気持ちを持ち続けることが何よりも大切なことです。
いかがでしたでしょうか?
産婦人科は「産科」と「婦人科」に分かれていて、その両方を診ることができるのが「産婦人科医」です。
産婦人科医になるには6年間の勉強と、2年間の研修を受けなくてはいけないため、合わせて8年かかります。研修でさまざまな診療科で広く知識と経験を積むことによって、その後の産婦人科医の仕事に役立てることができるのです。
産婦人科医の年収は年代(キャリア)や地域、勤務先によって差が出るため、産婦人科医を目指す人は、そのことを考慮しながら自分に合った勤務先を選ぶことをおすすめします。
産婦人科医はハードな勤務なうえ、訴訟リスクも高い大変な仕事です。
ですが、そんな産婦人科医には「幸せ」と「感動」を感じることができる瞬間があり、それが何よりも大きな魅力になっているようです。
「人のためになりたい」という純粋な気持ちを持ち続けることが、産婦人科医になるうえで何よりも大切です。
現在、少子化や高齢出産が問題になっている中、産婦人科医の人手不足もまた深刻化しています。
新たに産婦人科医を目指す医師が増えるように、さまざまなリスクや勤務時間の改善などを早急におこなうことが重要になってきています。
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